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  • 7H58 エレベーション ー 世紀の種雄牛

    この記事は、ご覧の通りちょうど一年前印刷物として関係者にご紹介したものですが、 エレベーションが与えたインパクトの大きさと改良への多大な功績を抜きにしては 現代ホルスタインを語ることは出来ません。彼の代表的な息牛、スターバックやトラディション、 その息のエアロスター、リードマン、クレイタスとその又息牛達を見れば、このことは誰にでも明白です。 そこで再び彼に登場願い、今回はインターネットでお届け致します。


     新年明けましておめでとう御座います。

     20世紀の最後の年、西暦2000年の幕が上がり、気分も新たに21世紀への準備の年となりましょうが、NOSAWA EXPRESSも1990年1月にVOL.1を発行して以来 ついに10年間お付き合い頂き誠に有難う御座います。これからも精一杯興味ある面白い世界の酪農事情をお伝えして行こうと思っていますので どうぞよろしくお願い致します。NOSAWA EXPRESS VOL.136(10/11月号)で"20世紀のキングとクイーン"についてご報告したばかりですが、今世紀、 ホルスタインの改良に最も貢献したブルとして世界中の関係者が選んだ "エレベーション" について、更に彼の血液がその息牛 "スターバック" "トラディション"等を通して現在の種雄牛に脈々と流れ伝達されている現実を見る時、この偉大な種雄牛ラウンド オーク ラグ アップル エレベーションについて今少し知る必要があるのではないかと思い、以下の記事をお送りする次第です。

    福本


    偉大な遺伝力

     60年代後半から70年代に掛けて、ヨーロッパとその他の世界における乳牛の"ホルスタイン化"が始まったばかりであった。 その実現の為に優秀な遺伝力を提供した種雄牛の中の1頭がエレベーションであった。彼は、乳肉兼用種のフリージアンをホルスタイン種に変える 大きな先駆者の役目を果たした。ドイツやフランスやオランダでは、彼の娘は1/2か3/4ホルスタイン種であったが、人々の興奮を呼び起こした。 特にドイツの共進会に於いては、エレベーションの娘が上位を独占し、ナショナル チャンピオンを1頭以上輩出している。 彼の素晴らしい乳房を娘達に伝達させる遺伝力とその均一性が、多くの生産者に更に彼の精液を使わせた。今日、ヨーロッパでの著名なカウ ファミリーの多くは、 北米から導入された純粋種であるが、伝統的なヨーロッパ フリージアンにルートを持つ血統の牛は、ホルスタイン種の血液を取り入れた初代か 二代目にエレベーションが顔を出している。バーク系とラグアップル系という非常に強く系統繁殖された二大血統の組み合わせと雑種強勢の力が生み出した "エレベーション" は、"世紀の種雄牛"と呼ばれるに相応しく、ホルスタイン種のレベルを新しい高さまで押し上げた。

     この"今世紀のキング"の誕生の為には、第2次大戦の終りの頃にある人が行った米国バージニア州からカナダ モントリオール市までの旅が必要であった。 バージニア州パーセルビルに在った "ラウンド オーク ホルスタインズ" のオーナー チャールズ ホープと彼の息子ロナルドはケベック州ハドソンハイツの "モントビク牧場" が1942年に行ったディスパーサル セールに出席する為の旅をした。彼等はそこで見た牛に圧倒されただけでなく、 カナダのラグアップル系の血液で系統繁殖をして "ラウンドオーク牛群" を作り上げようと云う固い決意を胸に帰って来た。ロナルドの若い従兄弟のジョージ ミラーはかれら二人が旅行で留守中に牛の世話をした。彼は年少の頃、度々この牧場を訪ね仕事を手伝いながら多くの時間を過ごしたが、後日、 エレベーションの誕生に大きな役目を果たすことになる。それ以降、25年以上に亘ってラウンドオーク牧場は、"モントビク チーフテン 6世""モントビク パス ファインダー プライズテイカー"、エレベーションの4代前の雌牛を含むブラッケル牧場の雌牛達、"ポモナ ハブスト コマンダー" "グレナフトン デザイナー" "グレナフトン ゲイエティ"に"オズボンデール アイバンホー"が牛群形成に大きな役目を果たした。これらの牛達を結ぶ共通の糸は、彼等の体中に流れるラグアップルの血液の量である。


    体高を求めて

     ホーポ氏はラウンドオークの牛群に体高とサイズを加える為に"グレナフトン ゲイエティ"を購買した。ゲイエティの父はロサフェ センチュリオンで母親は、 ラグアップルの系統繁殖で生産されたモントビク ポッシュの一族であった。ゲイエティの娘達が成長するにつれ、ホープ氏が望んでいた様な体高と体長は出て来ない事が判った。 ジョージ ミラー氏は、この頃にはバージニア人工繁殖協会と呼ぶ人工授精所のマネージャーになっていたが、"オズボンデール アイバンホー"を使ってみてはどうかと推奨した。 アイバンホーは、そのずば抜けた体高と体長(訳者注:185cm、1260キロあったと云われる)故にラグアップルとの血液の組み合わせは、 ラウンドオーク牧場の改良計画にぴったりの種雄牛であった。そこでアイバンホーを見る為に当時繋養されていたペンシルバニア州のアトランティック ブリーダーズ組合を訪問した。 その時に、ホープ氏はこの雄がいたく気に入り50アンプル(訳者注:当時精液はアンプルに入っていた)の精液を買った。ラウンドオーク牧場では、アイバンホーを使うことで 更にラグアップルの血液を濃くしたが、これが非常にうまく働いて牛群内に30頭以上のアイバンホーの娘が生まれ、その内3頭がEX-4Eへと成長した。即ち、"プリンセス パットEX-92-4E" "イブ EX-94-4E"(エレベーションの母)"レイデイ EX-95-4E"である。彼女らは若かったけれども、非常に体高と体長があり、しかしひょろ長の感じで強さに欠けていた。


    アウトクロス

     今度はミラー氏は、別のアイデアを勧めてくれた。"タイデイ バーク エレベーション"は当時、アイバンホーの様にスター(人気種雄牛)ではなかった。しかもこの雄は ラグアップルの血液はまったく入っておらず、その意味ではラウンドオークの確立された改良計画とはあい反するものであった。しかしながら、彼の強さと良い乳器の遺伝力は良く知られており、 同時にペディグリーに顔を出す種雄牛は全て当時の人気者で素晴らしい血液を持っていた。彼は、バーク系のキツイ近親交配で生まれた雄である。"ウイス バーク アイデアル"を父とし、母は、 "ウイス バーク アイデアル"の娘で、即ち父娘掛けで産出された。又"ウイス バーク アイデアル"自身両親が"ウイバー バーク サイクロン"の息牛と娘牛で、即ち、兄妹掛けの産物であった。 その上に、"サイクロン"は、当時偉大なバーク系の元祖と崇められた"ウイスコンシン アドミナル バーク ラッド"の息牛であり、又母は"バーク ラッド"の娘牛、即ちこれ又父娘掛けであった。 勿論ロナルド ホープ氏は系統繁殖の信者であったので、多分この近親交配に魅せられてラウンドオーク牧場でこの20年間見たこともないアウトクロスの交配を意義あるものとして初めて試みる気になったのであろう。


    バーク × ラグアップル

     ロナルド ホープ氏は良く人に言っていたものだが、"アイバンホー イブ"、即ちエレベーションの母は、"ジョハナ ラグ アップル パブスト" を父に "ボンハー アベカーク ポッシュ 2世" を母に持つ3頭の同父母姉妹の血液をくぐっていた。その3頭の姉妹のうち、最も有名だったのが"モントビク ラグアップル ボンハー"で、彼女は4回オール アメリカンに輝き "モントビク パスファインダー" の母となった。この様にしてエレベーションは、母方で"ジョハナ ラグアップル パブスト"が20回掛け合わせられている。一方、父方で"ウイスコンシン アドミラル バーク ラッド"に11回行きつく。


    セレクト サイアーズ

     ラウンド オーク ラグアップル エレベーションは、1965年8月30日に生まれた。エレベーションは、力強く、肋の深い素晴らしい子牛であった。1才の時に、エレベーションは$2,800 (当時 @\360 \1,008,000)でバージニア家畜繁殖協会(AI)に売られ、かくして彼はラウンドオーク牧場が生産した後代検定参加牛の初の雄牛となった。その年の秋、ホープ氏は彼を共進会に出し、 ハリスバーグ市で行われたペンシルバニア オールアメリカン デイリーショウでクラス2位となった。一方ラウンドオーク牧場は、彼を授精所に販売する前に牛群で彼を交配しており、 10頭の娘牛が生まれている。当時、バージニア家畜繁殖協会とメリーランド・ウエストバージニア人工授精所との間で協定があり、それぞれのベストのヤングサイアを共同で検定することになっていた。 検定終了後は、事前に取り決められた本数の精液を両方の授精所のメンバーに供給する事で合意されていた。エレベーションは勿論その中の一頭で、1969年にメリーランド・ウエストバージニアAIはサイアパワーに バージニアAIはセレクト サイアーズに合併された。その結果、エレベーションの新しい所有者はセレクト サイアーズとなったが、以前の協定通りサイアパワーズのメンバーにも彼の精液が使われた。


    10,000頭の息牛

     エレベーションは2才になるとVG-86を貰い力強い種雄牛に成長したが、高いランクの能力系の種雄牛としては、デイリーさに欠けていた。事実、彼の娘達は特に育成段階で多少丸い感じのものが多かったが、 一旦分娩し、2産目、3産目と産を重ねる毎に強さが彼等の大きな財産となってきた。彼の娘達と同じ様に、エレベーション自身も成熟するにつれて体型的に改善され最終的にEX-96になった。 エレベーションが検定を完了した時のプルーフは、当時の種雄牛の中で能力的にトップクラスにランクされた。彼は8年間に亘り、能力面でオーナーリストのトップに立って居た。これは、 彼の母方祖父であるアイバンホーの記録に並ぶものであった。証明された能力面での優れた伝達力と共に、体型面でも卓越した力を発揮したことで他の種雄牛と区別され彼の人気は益々高まった。 一万頭の息牛が登録された歴史上初の種雄牛となった。彼の生涯で10万ポンド(45,372キロ)以上の記録を出した娘牛の頭数、一乳期3万ポンド(13,612キロ)以上を搾った娘牛の頭数、 それにEXを獲得した娘牛の頭数が最も多い種雄牛となった。現在までにEXの娘牛数は4,145頭に達し、この数字は体型得点を持つ娘牛の10%に当る。合計で乳検記録のある娘牛数が米国でほぼ60,000頭、 その中40,000以上が体審を受け、この全頭数の平均が81.1点(年令調整後83.6点)という、今日でも充分に競争力のある得点となっている。繁殖基礎牛として1,000頭以上の娘牛が、ゴールドメダルダム (金牌牛)となり、3,000頭がダム オブ メリットのタイトルを獲得した。多分エレベーションの様にずば抜けた偉大な雌牛を残した種雄牛は他に居るかも知れぬが、77点の普通の牛群を2才級平均で 82点に押し上げる遺伝力で彼に比肩出来る雄牛は居ないだろう。娘牛の多くは2才時でデイリーさに欠け、肋の開張が充分でないが、強さと素晴らしい乳器故に長寿で高能力の繁殖基礎牛へと成熟して行った。


    オール アメリカン

     エレベーションはその血統が、バークとアイバンホーの組み合わせ故に、娘牛の多くが顔が短く体全体がコンパクトな作りであった。しかしその中で体高があり胴伸び充分な娘牛を作出する能力も兼ね備えていた。 この彼の能力が70年代、80年代のオール アメリカンを続出させる力となった。このショウ タイトル獲得の為の厳しい競争の中で、最高の栄誉は、真にショウ リングでのエリートを認知するオールタイム オール アメリカン賞(過去の全オール アメリカンの中の最高位)である。この賞は元来1943年にスタートしたが、第二次大戦の為実際に共進会が開かれる事はなかった。この選出は過去にショウの チャンピオンになった全ての牛から行われた。それ以来、オールタイム オール アメリカンは1966年と1984年の2回選出されたが、その度に以前に選ばれた搾乳クラスのウイナーはその地位から降ろされた。 84年の搾乳牛クラスでの競争では、エレベーションの娘牛がほぼ全てのクラスを独占した。2才と3才級のオールタイム オール アメリカンの勝者は"シャドークリフ RA ジーナ EX-97"であった。成牛クラスでは、 "ノースクロフト エラ エレベーション EX-97"で、それまで同地位に居た"ハーバークレスト ローズ ミリー EX-97"は、そのタイトルを失い2位となった。厳しい競争の中で選出されるオールタイム オール アメリカンだが、その栄誉に4回も輝いたエラは、エレベーションの娘牛の中でも最高クラスの能力を記録しそのベスト レコードは、7才の時の364日 22,115キロ 4.2%Fである。4才級では、それまででおそらく 最高のショウカウと言える"ブルックビュ トニー チャリティ EX-97"であった。ジーナもエラもエレベーション自身の娘であったが、チャリティはフォンドマットの息牛を父とし、エレベーションの娘を母として生まれた。 もう一頭、ショーリングで大活躍したエレベーションの娘に"ティアバック エレベーション トゥインキー EX-97"が居るが、彼女は1986年にアメリカ トリプル クラウン即ちイースタン、セントラル、 ウエスターンの三大ナショナルショーとカナダ ローヤル ショウで同一年に全てグランドチャンピオンとなった唯一の雌牛である。エレベーションはその子供達が100個以上のオール アメリカン タイトルにノミネートされ合計22のタイトルを獲得している。


    大 波

     80年代には、彼の息牛が大波の様に大活躍した時代であったが、それをリードしたのは"ハノーバーヒル スターバック"である。極く普通の牛群を一世代で上質の牛群に改良すると言う 伝達能力では父親にはかなわなかったが、超上等の牛を作る力ではスターバックは父親以上の実力があった。子供の中で、43頭のオール アメリカンと34頭のオール カナディアンのタイトルを取り、 その中で搾乳クラスで10個のオール アメリカン タイトルは歴代No.1で、スターバックは"ショーのキング"という評判を取った。しかし、能力面でも娘牛の中に極めて高い泌乳力を示すものも居て、 世界規模でヤングサイアの父親として使われた最初の国際的種雄牛となった。その結果、ヨーロッパでは、ベルト(ドイツ)、ベスネバック(フランス)、ブーキー(イタリア)等の人気息牛が生まれた。

     "スイートヘブン トラディション"もその息牛クレイタスやリードマンを通じて非常に国際的にインパクトを与えた種雄牛である。タイプのスペシャリスト、"ジュニパー ローテート ジェッド"の母親になったのも、 トラディションの娘牛である。他のエレベーションの成功物語に含まれるのは、"トニー""ピート""セクセーション""ライム ホロー"や"マジェスティ"である。これら著名種雄牛の母親には色々な血統があり、 この事は、エレベーションが、どんな血液との組み合わせでも改良効果を発揮出来るという事実を証明するものである。エレベーションの血液を重ねる事については、デイリーさの欠如、肋や骨の丸さを心配する向きもあったが、 スターバックの娘達に見られる体高や体長がこの考え方を部分的に排除している事も事実である。"ハノーバーヒル レイダー"は、エレベーションの娘にエレベーションの息子を掛け合わせて輩出された雄であるが、 彼は改良にも貢献した良い見本である。

     もう一頭、"マダワスカ エアロスター"もエレベーションの息スターバックと別の息"クリントンキャンプ マジェスティ"の娘との交配で産出されたが、彼はスターバックの息牛の中でも、 これからも引き続きその息牛や孫息牛を通して世界のホルスタイン種に貢献してゆくと考えられる。又体型スペシャリストとして人気のある"マークレスト エンコア"もエレベーションの孫娘、 即ちエレベーションの息牛"バレンティナ オークヒル スーパー"の娘とスターバックとの交配の結果生まれた。

     エレベーションの名は今日の牛の血統書の中では数世代前にしか顔を出さないが、この名は不滅の種雄牛として運命づけられている。世界中のホルスタインに及ぼす彼の影響力は、 ちょうどサザ波が最終的には池の全ての沿岸にたどり着く如くに波及してゆくに違いない。

    訳者注:
    ご参考までにエレベーションが今日の主な種雄牛につながる系統図を下記します。

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